American Rock

『赤心の歌』アル・クーパー

クロスレヴューvol.1


No.1

名前

テリー横田

電子メール

terry@lares.dti.ne.jp

URL

http://www.lares.dti.ne.jp/~terry/index.html

いつ聴いたか

1982年

その時の境遇

大学1年かな?

今でも聞きますか

もちろん。

レヴュー本文

 このアルバムは私にとって、長い間聴きたくても聴けなかった「幻の」アルバムでした。今でこそ廉価盤CDで楽に入手できるようになりましたが、アナログ時代はずっと廃盤だったのです。
 大学時代、近くの下宿に住んでいたロック好きの先輩がこのアナログ盤をもっていて、「これは泣けるで!」と言いながら聴かせてくれて以来、都内の中古・輸入盤店を捜し回った思い出があるのです。しかし結局見つからないまま。そんなアルバムですからCD化され手にした時には震える思いでした。

 アル・クーパーいうと、「フィルモアの奇跡」を初めとする一連のスーパー・セッションを企画したり、ブラス・ロックの大所帯バンド、ブラッド・スウェット・アンド・ティアーズを結成したりと、ソロアーティストと言うよりは陰の大物というか、企画家・プロデューサーとしてのイメージが一般的でしょう。私も彼のソロアルバムの存在は中学・高校時代はまったく知りませんでした。

 このアルバムは彼のソロ6作目にあたり、彼はヴォーカルとキーボードの他にギターソロも弾く活躍ぶりです。が、正直言ってその歌もギターもバカうまとは言い難く、やや頼りなく聴こえます。しかし、その頼りなさがなぜか「泣ける」のです。か細い声ですが彼の歌い方は実にソウルフルで、コブシ回しの裏に何とも言えないせつなさ、悲しさが滲み出る感じがします。やはり根っこがブルーズ/R&Bなのでしょう。彼のギターにしても、テンポの早い曲などではテクニックの甘さが露呈する場面もありますが、スローなブルーズナンバーでは逆にそのたどたどしさが余計に情感を濃く伝える助けにすらなっている、そんな感じがします。

 泣ける泣けると書いて来ましたが、アルバム全体の印象はウェットな中にもきちんと計算された、ややドライな印象もあります。彼は曲作りもなかなかのものですが、キーボード奏者らしく非常に論理的なアレンジをする、そのせいではないかと思います。各種キーボードをセンス良く使い分け、ストリングスや木管やパーカッション類なども実に効果的に使われています。彼はジャズ好きとしても有名なのだそうですが、雑多な音楽のるつぼ、ニューヨークに育った都会人としての感覚がこのあたりに現れているのかとも思います。

 彼の書く歌詞にも、その都会人としての孤独のようなものが、ところどころに現れている気がします。冒頭「自分自身でありなさい」(Be Yourseif, Be Real)と訴えるメッセージは、とりもなおさずアル自身が自分に向けたメッセージでしょう。凜とした孤高、しかしそれは寂しさと裏腹です。ラストの「人生は不公平」(unrequited)の歌詞もそうです。男女の複雑な三角関係とも、冷え切って崩壊寸前な両親と子供との関係とも取れる、意味深で抽象化された歌詞ですが、つらい人間模様を歌っていることは間違いないでしょう。そこには、もう自分の力ではどうすることもできない、絶望さえ通り越したあきらめの境地というほど、せつなく、やるせない男の後ろ姿が見えます。理想の音楽を求めてさまざまな人脈をさぐりながら、結局はどこの水とも相入れなかった彼の生き方を象徴しているかのようです。

 が、時として彼は、狂わんばかりの情熱を見せます。自作ではありませんが、ベトナム帰還兵の悲しい末路を歌い社会にプロテストしたり(Sam Stone)、ソウルのグルーヴに乗せて恋人の名を絶叫したり(Jolie)もします。特に後者「Jolie」はまさに名曲。現代のダンスビートの祖としての、レアグルーヴの一つの典型としても評価できるのではないでしょうか。(1999.6.12)


No.2

名前

斎藤 洋

電子メール

hsaito@cb3.so-net.ne.jp

URL

 

いつ聴いたか

1973年頃

その時の境遇

高校1年生

今でも聞きますか

7−8年に1回くらいは聴く

レヴュー本文

 中学生時代よりBLOOD SWEAT&TEARS;が大好きな私は高校1年生にNEW BLOODが出た前後にそれまでのアルバムをすべて買い揃えた。もちろん「子供は人類の父である」もはいっているが、BSTルーツを探るためにはアルクーパーを聴かなくてはいけないと勝手に決め込んだ。「早すぎた自叙伝」「アイスタンドアローン」という順番でLPを購入して聴いたがどうも自分で描いていたイメージとは違っておりピンと来なかった。

 レコード屋で「赤心の歌」のジャケットを見て「これだ!」と直感した私は小遣いをはたいてLPを購入した。プログレッシブロック全盛期において周りにこんな音楽を聞く人はいなかった。しかし直感は正しかった。その当時難しい事はわからないが何か心に訴えてジンと響く音楽であった。

 その後もブルースプロジェクト関係、スーパーセッション、フィルモアの奇跡、レーナードスキナード等アルクーパー関連のアルバムを数多く聴きこなしたが私の中で何故かこの「赤心の歌」が他のアルバムとは違った感覚でしっかりと刻み込まれていた。

 大学時代よりロックから遠ざかりジャズ系アマチュアミュージシャンになってからも「赤心の歌」は下宿で時々聴いた。最近ではこのコーナーを知る前に偶然つい6月下旬に聴いたばかりであった。アルバムをアレンジ、曲想、アルクーパーの音楽性等分析すると色々な局面がみられようが私自身あえて10代の少年時代の直感とこのアルバムから受けた感覚を大切にしたいのでそっとしておきたい。(1999.7.1)


No.3

名前

 エーハブ船長

電子メール

 yutayuta@iris.dti.ne.jp

URL

 http://www.iris.dti.ne.jp/~yutayuta/index.htm

いつ聴いたか

 1988年

その時の境遇

 高校3年生

今でも聞きますか

 聴きます

レヴュー本文

アル・クーパーと言うと思い出されるのは、やはりアナログが入手困難だった80年代後半の記憶だ。当時僕は高校生でトッド・ラングレンやトラフィック等の70年代ロックに熱中していたが、何かのきっかけで「アル・クーパーという凄いミュージシャンがいる」と聞き、アルの作品を求めてあちこちの中古レコード店を探しまわったのである。懐かしい話だ。

確か最初に入手したのはUAより出た『倒錯の世界』、次に手に入ったのが『アイ・スタンド・アローン』だったと思う。どちらも気に入り毎日聴いて喜んでいたが、思い入れという点ではやはり本作『赤心の歌』が一番だ。何しろこのアルバムは曲が良い。カヴァー曲もオリジナル曲も捨て曲がなく、何回聴いても人の心に訴えかけるものがある作品だと思う。この印象は最初に聴いたときから今まで一度も変わっていない。

収録曲はどれも良いが、特に好きなものを3曲だけ挙げさせてもらおう。まずは美しいピアノが心に染みる「ビー・ユアセルフ・ビー・リアル」。語りかけるような歌詞も胸に響く。そして日本ではアルの代名詞と化している超名曲「ジョリー」。何でもアルが当時恋仲だったクインシー・ジョーンズの娘について唄ったものだそうだ。ということは当時アルは『ニュー・ヨーク・シティ』のジャケットにも登場した美人の奥さんと破局していたのだろうか…興味は尽きない。

ここで注目して欲しいのは、この曲で印象的なテーマを奏でているアープ・シンセサイザーだ。あまり話題に登らないが、アルは非常にシンセの使い方が上手い。この「ジョリー」にしても前述の「ビー・ユアセルフ・ビー・リアル」にしても、アープ独特の音色を生かしたフレーズを巧みに鳴らして曲を盛り立てている。

もう一曲はラストの「人生は不公平」がとても好きだ。特にこの曲で聴けるストリングスは非常に美しい。意味深な歌詞とも相俟って何とも言えない洗練された雰囲気を感じるのである。

思えば十代の頃、僕はこのアルバムを聴きながら未来の自分が何をしているかとよく考えていた。きっと年を取るごとにこのアルバムの価値がよく解ってくるのだろうなと何となく感じていたのだが、とりあえず聴き始めて10年経った今、僕は本作を昔以上に大切に聴いている。10年前に買ったアナログ盤もしっかり保存しているが、ボロボロのジャケットをジャケの裏側からガムテープで補修したのは失敗だったかな、と最近後悔している。(July.99)


No.4

名前

 

電子メール

 

URL

 

いつ聴いたか

 

その時の境遇

 

今でも聞きますか

 

レヴュー本文


No.5

名前

 

電子メール

 

URL

 

いつ聴いたか

 

その時の境遇

 

今でも聞きますか

 

レヴュー本文


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