British Rock

『トリック・オブ・ザ・テイル』ジェネシス

クロスレヴューvol.1


No.1

名前

エーハブ船長

電子メール

yutayuta@iris.dti.ne.jp

URL

http://www.iris.dti.ne.jp/~yutayuta/index.htm

いつ聴いたか

1991年

その時の境遇

大学3年生

今でも聞きますか

聴きます

レヴュー本文

70年代ジェネシスの素晴らしさを挙げ始めるとキリがないが、特に好きな作品がこの「トリック・オブ・ザ・テイル」だ。いや本当は「そして3人が残った」までの彼らの作品は順位が付けられないぐらいどれも好きなのだが、今回このレビューに取り上げる一枚としては本作を選んでしまった。言わずもがな、ピーター・ゲイブリエル脱退をものともせずに4人のメンバーが作った宝石のように美しいアルバムである。

私がいつこのアルバムを聴いても感心させられるのは、徹底的なまでの「隙の無さ」だ。収録された8曲はどれも良い出来で、親しみやすいメロディや美しいコード進行もあれば、変態的な奇数拍子や驚くほどテクニカルなアンサンブルもふんだんに披露している。既に『月影の騎士』や『幻惑のブロードウェイ』で聴かせてきたジェネシス・ミュージックの真骨頂は、難解なようでいて涙が出るほど美しいところにあると思う。

収録曲はどれもいい出来だ。「ダンス・オン・ア・ボルケーノ」で執拗なまでに繰り返される7拍子リズムの気持ちよさや、「マッド・マン・ムーン」「リプルズ」で聴かせる心洗われるような美しいメロディや、「ロベリー・アソールト・アンド・バッテリー」や「ロス・エンドス」で聴かせる超人的なアンサンブルはまさにジェネシスの魅力そのものである。どことなくビートルズの「ユア・マザー・シュッド・ノウ」を思わせるタイトル曲や、イギリスの民話をテーマにした「スコンク」などもシンプルなようでいて非常に奥の深い演奏が聴ける。アルバム全体の歌詞にファンタジー的色彩が濃いのも本作の特徴で、例えば「マッド・マン・ムーン」には砂男が登場するし、タイトル曲の主人公は有尾人である。こういった神秘的な歌詞の世界も聴き手のイマジネーションを刺激する重要な要素だと思う。

プログレッシヴ・ロックが好きな人は言うに及ばず、これからジェネシスを聴いてみようと思う人にも自信を持って薦められる名盤だ。(2002.10.22)


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