British Rock
『ジョンの魂』ジョン・レノン&プラスティック・オノ・バンド
クロスレヴューvol.1
No.1 | |
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名前 | 千冬 |
電子メール | chifuyu@ps.ksky.ne.jp |
URL | http://www.ksky.ne.jp/~chifuyu |
いつ聴いたか | 1977年? |
その時の境遇 | 中学の終わりか高校の始め頃 |
今でも聞きますか | 滅多に聴かない。 |
レヴュー本文 |
「結局、人間なんて孤独で寂しい存在である。しかし、信じるもの、愛するもの、信じられるもの、愛せるもの、のいずれかでもあればどうにか生きていける・・・」 そんな事を痛感させるアルバム。 それがJohn Lennonという媒体から発信された点が、このアルバムの最大の魅力であろう。 誰しもが現実に向き合って生きている訳である。 現実であるから楽しくもあり悲しくもあるはずである。 絶望に打ちのめされる事も一度や二度はあるのではないだろうか? しかし、Beatlesという成功で富と名声を得たJohn Lennonが悲観的になり絶望の淵を歩むはずがないと思うのは私だけではないと思うが・・・ そんな凡人の思い込みを根底から覆し「John Lennonもただの人間だった」と思わせてくれたアルバム。
精神療法の受けながら作られたアルバムらしい。
表現方法の束縛から解放された為か、見てはいけないもの、聴いてはいけないもの、という印象を強く感じてしまう。
しかし、現実であるが故か、力強さ、弱さ、優しさ、寂しさがストレートに感じられる。
その振幅が凄まじく大きい。
聴く側に与える波紋はもの凄いものがあると思う。
特にBeatlesが好き、Johnが好きなものにとっては津波の如くかもしれない。
私にとってもこの衝撃は大きかった・・・
木洩れ日のなかの2人・・・ |
No.2 | |
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名前 | あにき |
電子メール | ykawabata45@hotmail.com |
URL | http://homepage1.nifty.com/aniki-voice/ |
いつ聴いたか | 1971年 |
その時の境遇 | 中学3年生。ROCKが好きなバレー部キャプテン。 |
今でも聞きますか | はい。苦しいときは特に。 |
レヴュー本文 |
ゴーン。ゴーン。ゴーン。・・・マザー! っていう出だしは、 最近あんまり聴かないようにしてます。このアルバムの中には、 すきとか嫌いで判断していいのかどうか、よくわからない曲が何 曲かあります。世界のスーパースターが、かつて自作のアルバム で、これほどわかりやすく自分の心を作品として提示したことは なかったと思うのです。そのことに対して、すごい勇気だとも思 うし、また、これをやってしまうかとも思います。だから、好き 嫌いを言えない。 このアルバムが出たときには、もうビートルズは解散してたのか どうか。事実上はもう音楽的な共同作業は終わってたのですが、 法的にはまだだったように思います。70年代初頭のことです。 このころのジョンは、ヨーコとの愛を守ることや、新しい意識下 =ソロでの音楽を作ることにかなり疲れてたと思います。アメリ カでプライマル・スクリーム療法を受けて、精神的なダメージか ら立ち直ろうとしてたらしい。その治療がこのアルバムの原初感 というか、マザーのような深層心理を歌ったような詞に結び付け ていいものかどうかわからんけど、とにかくシンプルなバックと 、シンプルな歌詞が衝撃的でした。 特に歌詞は、LOVEのように哲学的なっていうか、日本の韻文(俳 句・短歌などの)のような奥行きの深い短いものが印象的です。 それと、GODやHOLD ON・・・での、その頃の彼の心境を直接的な 言葉で歌ったものに、驚き、感動しました。中でもGODの「僕はビ ートルズを信じない。夢は終わったんだ。僕はウォルラスだった けど、今はただのジョンなんだ。みんなも頑張ろう。夢は終わっ たんだよ。」っていう最後は・・・。なんていうか・・・。どれ ほどの勇気をもてたら、こんな事がいえるのだろうと今でも思う のです。 ぼくはこれを聴いた時に、なぜ年上のファンがみんなジョンレノ ンを崇拝するのかがわかったような気がしました。この人と同時 代に生きてる感覚を、少しでも持てて本当に良かったと思いまし た。世界のある分野でのトップランナーが、こんなばか正直でい ることに感動しました。勿論、これも営業用ちゃうの?と勘ぐる 事も出来ます。でもこのあとのアルバム「イマジン」や、「サム タイム・イン・NYシティ」なんかで明らかになるのですが、彼は その時々に思ったことを歌ったり発言したりしてるだけで、奇を てらったり要領よくまとまったりは出来なかった。彼のソロ活動 を見ていけばいくほど、このアルバムでの何にも飾りのない真っ 正直な歌たちが深く響いてきたのです。 バックアップするミュージシャンも、友人と呼べる人たちばかり での小さなセッションです。リンゴ、ハンブルグ時代からの友人 クラウス、フィルスペクター、そして自身のピアノ&ギター,あと はGODでのビリー・プレストンのピアノ。これだけ。たったこれだ けのバックです。でも、作り出すサウンドの芯の強さは、彼の全 アルバムのなかでも最高です。ロックンロールはドラム・ベース ・ギターかピアノだけで出来るってことをはっきりと教えてくれ ます。一切の無駄のない鋼のようなサウンド。それはバラードで も。このアルバムを聴いて「イマジン」を聴くと、かなり甘いお 菓子のように思います。それもいいのだけど、僕はいつまでも聴 けるという意味で、このサウンドを支持します。このサウンドは 、まさにジョンが50年代に聞きほれてたエディ・コクランやジ ーン・ヴィンセント、勿論エルヴィス達のもつソリッドなロック ンロールのエッセンスだから。 今は関心がない人でもこのアルバムは買っておいたらいいと思い ます。いつか必ず心を揺らされる日が来ますから。 |
No.3 | |
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名前 | ☆TAKE |
電子メール | s-take70@ma.neweb.ne.jp |
URL | http://www.geocities.co.jp/MusicStar/5266 |
いつ聴いたか | 1988年夏頃 |
その時の境遇 | ビートルズのアルバムを全部聴き終わって、ジョンのソロでも聴いてみようかなという軽い気持ちで |
今でも聞きますか | ほとんど聴かない、というより聴けない |
レヴュー本文 |
私がビートルズ・ファンになったのはジョンの声に魅了されたせいでありまた、ビートルズの4人の中ではジョンが一番好きで・・・。 そんな私が、ビートルズのCDを全て揃え終わったところで、 「今度はジョンのソロを聴いてみよう」と思うことは、ごく自然なことだった。「最初は何から聴こうかな」と迷った末、「まずは事実上のファーストから」ということで購入したのがこのアルバムだった。 「原題がPLASTIC ONO BANDか。きっとバンド色、ロックン・ロール色が濃い、 ジョンらしいアルバムなんだろうな」。そんな期待を胸に歌詞カードの日本語訳を読みながらCDを再生した私。 しかし、私の期待は見事に裏切られ、逆にこれ以上ないほどのショックを受ける結果となった。いきなり重苦しい鐘の音とともに はじまる「Mother」、信じられないほどの音数の少なさ、生々しいジョンの声。 さらに、エンディング付近の叫びを聞くにつけ、「ショック」というより、 ちょっと怖いような感覚に陥った。その後も、ビートル・ジョンの 硬派なイメージとはかけ離れた繊細な「Love」、「Look At Me」、 攻撃的というよりも生々しい「I Found Out」「Well Well Well」、 美しい曲調とは裏腹な、絶望的な歌詞の「Isolation」・・・。 ショッキングな曲が続く。すっかり重苦しい気分に陥ったところに、 「God」が登場。「ビートルズを信じない。僕とヨーコだけを信じる」。 そして、「今まではWalrusだったけど、今は普通の人間だ」と歌われる。 いつもビートルズという重荷を背負い続けたジョンが、ようやくその重荷を下ろした素直な気持ちだったのだろう。 しかし、自分のことを「僕は人間だ」と歌わないといけないほど、 ビートルズはジョンにとって重いものだったのだろうか・・・。 ビートルズが好きで、その中でもジョンが好きな私にとっては、 頭を鈍器で殴られたかのような強いショックを受けた。ということで、壮絶で息苦しい曲が並ぶこのアルバム、最後のこの曲まで聴くことは、購入した当初の私には本当に辛いものだった。 以降、しばらくこのアルバムを再び聴く気にはなれず、また、ジョンのソロ作品も避けて通るようになった。 その後、『ROCK'N ROLL』とベスト盤を聴いてリハビリ、 さらには最高傑作『IMAGINE』に感動、ようやくジョンのソロ作に親しみが湧くようになったのは、それから1年半くらい後のことだった。なので、今はジョンのソロ 作は好きだし、「自分の弱さまでも露骨にあらわにしてしまう」ジョン・レノンと いうソロ・アーティストのことは、ビートルズとは切り離して聴いても 魅力的だと思っている。そう思って聴けば、このアルバムは ビートルズというビッグなバンドにいた、世界的なビッグ・スター によるアルバムというより、ジョン・レノンという、ただの男が、 自分のすべて、まさに邦題通り「魂」そのものを露骨に吐き出した 「随筆」のようなものといえるかもしれない。私は、ここまで露骨 に自分の「魂」をさらけ出したアーティストを知らない。そうした意味で、このアルバムは「名盤かどうか」とか、「音楽的に優れているかどうか」とか、「テクニックがどうのこうの」とか、「曲の出来がどう」とか、そういうレベルで語られるべきものではないような気もする。ということで、私はこのアルバム、「凄い」とは思う。でも、今でもやっぱり積極的な気持ちで聴く気にはなれないというのも事実。 それなりの「覚悟」がないと聴けないとでもいおうか・・・。 初心者の方には「まずはベストかIMAGINEから」といいたいところだ。 |
No.4 | |
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名前 | Mr.Lizzy |
電子メール | yasuba-3.27@gamma.ocn.ne.jp |
URL | http:// |
いつ聴いたか | 1983年頃 |
その時の境遇 | ビートルズを全曲制覇して次は各メンバーのソロアルバムを聴こうとしていました。 |
今でも聞きますか | たまに。 |
レヴュー本文 |
なんて重苦しいアルバムなんだろう」これがこのアルバムを聴いた初めの感想でした。その頃ビートルズの楽曲は全て聴いたので、次は各メンバーのソロ を聴きたいと思っていました。ちょうどその頃ラジオでエアチェ ックした「LOVE」をとても気にいったのでこの曲が収録されてい る「ジョンの魂」の購入に至った次第です。また実質的なジョン のファーストアルバムだったため、まだビートルズ色の濃い内容 だと想像したというのもあるかもしれません。 とりあえず「母の死」まで聴いた後、少しこのアルバムを買ったこ とを後悔しましたが、当時(10代半ば)としては高価な買い物で あるLPレコードは失敗したからといってすぐ聴かなくなるわけ にはいきません。何度も聴いたら理解できるかも、という思いで とにかく聴き続けました。 ロックとして必要最小限の楽器しか使わず(ときには生ギター1本 で)、悲痛な歌詞を叫ぶように唄う一人の男ジョンレノン。 ここにはビートルズというあまりに重いものを背負ってきたジョン の心の叫び、魂の叫びがあります。若くして母を亡くし、親友を 亡くし、デビュー後は非人間的な生活を強いられたジョンはヨー コと出会うことによって初めて心の安らぎを得たのでしょう。よ うやく心の中にたまっていたものを吐き出して新たな出発をしよ うとしていたのかもしれません。 何度も聴き続けた結果、2/3くらいの曲は自分のお気に入りにな りましたが、全てを理解するには若すぎました。しかしこのアル バムに対する思い入れは強く今も「イマジン」よりこちらを聴く 機会の方が多いのも事実です。 |
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