British Rock

『危機』イエス

クロスレヴューvol.1


No.1

名前

gemini

電子メール

horizon@kd5.so-net.ne.jp

URL

いつ聴いたか

その時の境遇

今でも聞きますか

レヴュー本文

 わたしとYesとの出会いは、それは劇的なものでした。13の誕生日にラジカセを買ってもらい、最初に録った曲こそ、Yesの「ラウンド・アバウト」でした。この曲を聴いて、物凄いショックを受けたことは言うまでもありません。

 当時、家にはステレオなどという高価なものはなく、民放ラジオから聞こえてくるシングル曲が私にとっての洋楽のすべてでありました。もちろん、プログレシヴ・ロックなんて言葉すら知らず、10分近い長い曲を演るグループが存在するというだけで、それはもう驚き以外のなにものでもありませんでした。イエスお得意のスピード感あふれるサウンド、はじめて聴くエレクトリックな音、ドラマチックな曲作り、今聴いても、ほとんど古さを感じさせないのですから、まだ中学生だった私が受けた衝撃が、落雷のようだったといっても、決して過言ではありません。

 そして、次に聴いた曲こそが、イエスの最高傑作との呼び声の高い「危機」でした。「ラウンド・アバウト」と同様に、独特のピーンと張り詰めた緊張感、それ以上にドラマチックな展開、クリスタルで荘厳な世界、イエス・サウンドの粋を集めたこの大傑作を聴き、彼等こそは無限の可能性を秘めたグループであると確信し、一体、どこまで、彼等はそのサウンドを極めるのであろうかと、期待でいっぱいでした。

 その後、高校入学と同時にステレオを手に入れ、イエスのアルバムを一枚、また一枚と、買い揃えていきました。「こわれもの」「危機」と、ロック史に残る大傑作を発表した後は、どうしても「地底海洋学物語」は冗長な印象を否めないし、「リレイヤー」はパトリックがイエスに新風を吹き込んでくれたものの、かつての緊張感も、スピード感もなく、イエス・サウンドがすっかり形骸化してしまって、新鮮味にかけているように私には感じられました。しかし、そのころは、まだ彼等ならば、また何か凄いことをやってくれるだろうと、信じて疑いませんでした。

 そして、はじめてリアルタイムで聴くことのできた彼らのアルバムは、77年発表の「究極」でした。この作品からは、必死で変貌を遂げようとするイエスと、旧態依然としたイエスの葛藤ようなものが強く感じ取れました。いわば、過渡期の作品にあたり、いかに「究極」や「パラレル」を次回作につなげるか?課題を残す内容になっています。

 78年に、リリースされた「トマト」は、正念場を迎えたイエスが、ついに、いわゆる「イエス・サウンド」と訣別をはたしたアルバムであります。「自由への解放」と「自由の翼」という傑作もあるものの、特に「クジラに愛を」「UFO到来」「天国のサーカス」といった、およそ彼等らしかぬ超駄作がひしめき、まざまざと、彼等の底の浅さを見せつけられた思いがしました。

 79年、その打開策として、イエスは、ジョンとリックの代わりに、バクルズの二人を迎えるという暴挙に打って出た結果、多くのファンの猛反発により、Yesは解散へと追い込まれました。

 イエスは、他のビッグ・ネームのように、その名前を死守することに終始するのではなく、最後まで果敢に自分達のサウンドを探し求めて、ついには力尽きてしまった。彼ららしいドラマチックな最後ではありませんか、そんな彼らを私は誇りにさえ思っておりました。

 ところが、83年にイエスの再結成のニュースを聞いた瞬間から、私のイエスに対する幻滅がはじまり、今では恥だとさえ思うようになりました。

 再結成イエスなぞ断じて認めることのできないことでありました。しかし、ジェネシスの大成功やエイジアの大健闘を苦々しく思っていた、まさに、そんな時、「ロンリー・ハート」がNo.1に輝くという快挙に、追いつけエイジア、蹴落とせジェネシス。とにかく、彼らが返り咲くためなら、手段なと選ばなくてもイイという安易な考えで、ファン復帰したせいでどれだけ彼らの裏切られ続けたことでしょうか?

 ラヴン主導の「ロンリー・ハート」や「ビッグ・ジェネレター」も、渋々イエスと認めました。アンダーソンが脱退し、イエスとABWHが名前を裁判で争っても、見て見ぬ振りをしました(Jefferson Starshipの場合は、これでファンを辞めました)。イエスとABWHが合体した「ユニオン」もイベントとして認めました。「トーク」で元の布陣に戻っても、一切文句は言いませんでした。

 ところが、95年の初め、『74年のスクワイヤーの誕生日に、21年後「地形海洋学」のメンバーで集う約束をしていた。』という記事を読んで、ついに我慢の限界を超えました。なぜなら、彼らの発言が弁解がましく、昔のメンバーが集うことで予想されるバッシングをかわすための嘘としか思えなかったからです。ラヴンの脱退ということもあるのでしょうが、これを機に多くのファンが彼らの元を去り、彼らの大失速が始まったように思われます。

 かつて、尊敬していたグループのメッキがどんどん剥がれていく姿なんて見たくなかった(Jan.00)。


No.2

名前

Ferio

電子メール

purehearts@softhome.net

URL

http://www.geocities.co.jp/MusicStar/7434/

いつ聴いたか

1974年

その時の境遇

高校生

今でも聞きますか

2ヶ月に1度は聴きます

レヴュー本文

イエスが初来日した時はユ−ライア・ヒ−プと同時であった。当時、音楽マスコミは「神と悪魔の対決」という変な宣伝をしていた。ヒ−プはルックスといい、曲のタイトルにもオカルト系が多かったのでうなずける。イエスの場合はそのグル−プ名から「神」と無理矢理に呼んだらしい。キリストなら「ジ−サス」である。。。(笑) しかし、彼らのサウンドに「神」を感じたファンは多いと思う。イエスの根底にある思想はピュア−(純粋)であり、詩に込められたメッセ−ジは神に変わって汚れた人類に警告を送っていくようにも思えた。・・・当時の私は、まだ青かったのである。(笑)

ジャケットから取り出した黒い円盤をターンテーブルに載せた瞬間から、私の心は遠い異次元世界に飛んでいくのであった。

1.危機

イントロの静かな小鳥のさえずり、小川のせせらぎがとても心地よい。「ちょっと音が小さいなぁ、きっと録音レベルが低いのかな?」ボリュームを上げた直後に私のかけていたヘッドホンに強烈な音が炸裂!思わず飛び上がる私。クリムゾンの『宮殿』のイントロもそうだった。(苦笑)プログレの人って驚かすのが得意なようだ・・・。

ギター、ベース、ドラム、オルガンが複雑な変拍子で疾走していく。めちゃくちゃなアドリブ合戦をしているようで、ちゃんと小節ごとの節目には各楽器のリズムが合うところはすごい。イエスって超テクニシャンである。やがて、音の静かになりジョンのベルベットボイスが天空から降りてくる。リックの神秘的なオルガンの音色にあわせて重厚なコーラスがしなやかにジョンに絡んでいく。(クリスは子供のころに聖歌隊に参加していたことがあったらしい。)私の心はミルクで出来た河を静かに下っていくような心地よさに満たされていく。「I GET UP,I GET DOWN」はこのアルバムの中でもっとも好きな部分である。そしてテンションを高めながら上り詰め、静かにエンディングを迎える。

大人になってから聞き直してみると、組曲「危機」の少しも隙のない完璧な構成はまるでセックスを思わせる。最初に耳元への愛のささやきで相手の緊張感をほぐし、徐々にヒ−トアップ。優しい愛撫の繰り返しで二人の一体感を深め、じっくり濡れたあとは全身全霊を使い最後に向かって一気にたたみかける。静かなエンディングは、終わったあともいきなり離れないで、しばらくの間は抱き合ったまま行為の余韻に浸ることを思い出させてくれる。(笑)(しかし、実際にベッドでのBGMに使ったことは一度もない・・)

「危機」は、緊張感と陶酔感が一体となった後世に残る名曲である。

2.「同志」

アナログではB面の一曲目。レコ−ドを裏返す間に前曲の余韻に浸ることが出来た。CDもぜひ、余韻に浸れる空白の時間を10秒程度入れてほしい。(笑)前半はアコースティックなサウンドにバーズやCSN&Yにも似た牧歌的なコ−ラスがからみ、高原のさわやかな朝を思わせる。ジョンのハイト−ンなボ−カルは汚れを知らない純情な少年のようだ。

後半は一転してシンフォニックなシンセが鳴り響きドラマチックな展開が感動を呼ぶ。詩に込められた彼らの「愛」のメッセ−ジをじっくりと味わってほしい。

3.「シベリアン・カ−トゥル」

イントロの切り裂くようなスティ−ブのギタ−で始まるこの曲はライブの定番となった。このアルバムで聞けるバ−ジョンは少々こじんまりとしているので、「イエスソングス」でのプレイも聞いてほしい。サビの部分のメロディが「アルプス一万尺」に似ておりユ−モアもたっぷり。2つの組曲形式の大作のあとに聞くにはちょうどいいと思う。

名作「こわれもの」を越える完成度の高いこのアルバムを作りあげたイエスは、その後、メンバ−チェンジで新しい血を導入することでしか前進することが出来なくなってしまった。それでは私のイエスのメンバ−紹介。(笑)

ジョン・・・・誇大妄想癖を持ち現実ばなれしている「夢見るボ−カリスト」。一般世間のル−ルを知らなくてもクリスがフォロ−してくれる幸せな人。

スティ−ブ・・食事と睡眠時間以外はいつも練習をしている「ギタ−職人」。猿に似たワイルドな風貌。アコ−スティックギタ−の名手。

クリス・・・・プログレロック界最強の「ス−パ−・ベ−シスト」。コ−ラスワ−クの鬼。ルックスは不良番長。(笑)メンバ−を影で操っている人事部長。

ビル・・・・・屈折した性格を持った「繊細なドラマ−」。タイコを持った渡り鳥。いじめられっこ。(笑)のちに私のフェバリット・ドラマ−に昇格。

リック・・・・ニヒルな「キ−ボ−ドの秀才」。性格にムラがありクリスのようなリ−ダ−がいないと実力を発揮できない。のちにデブになった。(笑)

キツイことを言ってしまったが、このラインナップはイエス史上最強であり大好きだ。

理想の音楽を追究するため脱退と加入を繰り返す集合体「イエス」の明日はどっちだ?(Jan.00)


No.3

名前

エーハブ船長

電子メール

yutayuta@iris.dti.ne.jp

URL

http://www.iris.dti.ne.jp/~yutayuta/index.htm

いつ聴いたか

1985年

その時の境遇

中学3年生

今でも聞きますか

たまに聴きます

レヴュー本文

イエスは僕がプログレッシヴ・ロックという言葉を認識するきっかけになったバンドだった。リアルタイムで聴いたのは1984年の大ヒット作「90125」からだったが、あのアルバムにショックを受けて溯って聴いた「こわれもの」と「危機」は、フロイドの「狂気」やストーンズの「レット・イット・ブリード」と並び音楽を聴く楽しさを教えてくれたアルバムだったと思う。でも決してすぐにその良さが理解できたわけではなく、「危機」にはまるまでは初めて聴いてから2年近くの歳月を要した。たしかその間はストーンズ、ビートルズ、そしてZEPとプログレ以外の大御所をじっくりと聴いていたと思う。

「危機」の収録曲はどれも素晴らしい。特に好きなのはB面だが、A面のタイトル曲にも呆れるほどの説得力がある。しかも聴くたびに何かを見つけられるような新鮮さがいつまでも失せないから凄い。昔は歌を聴いて感動していた気がするが、最近聴き直してみたら意外なくらいブラッフォードのドラムに面白味が感じられた。コーダの見事なコーラス・ワークで昇天した人も多いだろう。

B面の「同志」と「シベリアン・カートルー」は対照的な雰囲気の作品だが、どちらも本当に良い曲だ。前者の繊細なアコースティック・ギターや、これぞ必殺と言わんばかりのリック・ウエイクマンによるメロトロンとムーグの絡みは数多くの楽器弾きを感動させたはずだ。対する後者はシャープなエレクトリック・ギターで始まり、一糸乱れぬアンサンブルになだれ込む瞬間が最高に好きだ。こんなに高揚感のある演奏は、やろうと思ってもなかなか出来ない。ジョン・アンダーソンを中心としたヴォーカル・パートも素晴らしい。

所謂プログレッシヴ・ロックは1974年ごろを境に急速に衰退してしまったが、その最盛期にはこんな凄いアルバムが生まれていた。聴いているとじっくりそんなことを考えたくなる名作である(Jan.00)。


No.4

名前

Kensaku

電子メール

s-khg@yabumi.com

URL

いつ聴いたか

1971年、「同志」でした。

その時の境遇

中学生。でもアルバムとしてはもっと後です。多分、高校2年ぐらい。

今でも聞きますか

年に1〜2回、クルマで大音量で。

レヴュー本文

僕の中学時代といえば、深夜放送の花盛り。受験勉強と言いつつ小さなラジオに聞き入ってた。だいたいは、関西フォークの人気者かお笑いの人がDJだった。蛇足ですがDJのことをパーソナリティなんて呼んでる局もありました。

そんなある日聞こえて来たんです。イエスという人を食ったような名前の「アメリカ」です。当時のワーナー・パイオニアの企画盤2枚組980円に入っていたんです、サイモン&ガーファンクルのカヴァーのこの曲。衝撃でした。なんてことするんだ!ってな感じです。フォークをやってた僕らには神様みたいなサイモン&ガーファンクルの曲です。そのうちにこのグループの「同志」という曲も深夜放送でかかるようになってきた。

この曲がまた、今まで聴いてきた曲とは明らかに違う感触だった。当時は洋楽にアメリカもイギリスも関係なかったんで、どこの出身かなんて気にもしてなかったし、そのころ買うのはやっと貯めたお金で東芝のカレッジ・フォークを2ヶ月に1枚ぐらいだったので『危機』なんてタイトルはそれから数年後に知ったぐらいです。アルバム通して聴いてみたら新鮮なこと!もっと早く聴けば良かった。でも、なかなかこれは理解しがたい音楽であることは確かです。はたして当時のワーナーが「同志」をシングルにカットしてたのか知らないけどよくぞかけてくれたって気持ちです。

その後、いろんな音楽に目覚めたあと聴いてみると、ベースが重要なんだな、ってわかってきました。結局クリス・スクワイヤと、ジョン・アンダーソンがいたらイエスだな、って思えてきた。今では、どんなメンバーだろうとこの2人がいればいいや、って思ってます。なんか、訳わからない事いっぱい書きましたけど、今までのショックを受けた音楽のひとつです (Feb.00)。


No.5

名前

かじ

電子メール

rambling_jack_the_lad@hotmail.com

URL

いつ聴いたか

1997年頃

その時の境遇

高校3年だったと思う

今でも聞きますか

月に2回は

レヴュー本文

イエスを始めて聴いたのは15歳の夏。ベスト盤を図書館で借りました。それ以来8年間、ずっと大好きであり続けている数少ないバンドの1つです。
『こわれもの』の次に購入した本作は、今まで聴いたアルバム(イエスに限らず)の中でベスト10を決めるとしたら確実にランク入りですね。

この作品は、ヘッドフォンをしてじっくりと聴くのがいいんじゃないかと。「危機」の冒頭に使われてるSEもそうだし、中盤でのチャーチ・オルガンとジョン・アンダーソンの夢見がちな歌声(頭の中も夢見がち)がからむとこは絶対にこの方法で聴きたい。
3曲続けて一気に聴くことが多いけど、中でも「シベリアン・カートゥル」は聴く頻度がとくに高いです。こういうだだっ広い草原やら北の大空を思わせるスケールの大きい曲ってかなりツボなもんでして。

目立たないけど、「同志」は歌心の点では一番だと思います。アコギ・チューニングで始まるさりげなさもいいし。
他にもよく聴いてるイエス(+メンバーのソロ)作品はあるけど、これがダントツでお気に入りです。

思えば、洋楽に深入りするようになったのってたまたま手にしたイエスがきっかけなのかも。「サヴァイヴァル」なんて、初めて聴いた時は今までに体験したことのない何かを感じましたからねえ。
この“イエスとの遭遇”によって、私はジェスロ・タルやダイアー・ストレイツを通学のお供に選ぶ女子高生になったのでした・・・。(Jan.03) 


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