British Rock

『燃ゆる灰』ルネッサンス

クロスレヴューvol.1


No.1

名前

エーハブ船長

電子メール

yutayuta@iris.dti.ne.jp

URL

http://www.iris.dti.ne.jp/~yutayuta/index.htm

いつ聴いたか

1989年

その時の境遇

高校卒業直後

今でも聞きますか

聴きます

レヴュー本文

このアルバムには相当に思い入れがある。初めて聴いたのは高校を卒業してすぐの頃、今は亡き新宿エディソンの二階にあったプログレフロアで購入した。再発日本盤の帯付きで1200円ぐらいだっただろうか。家に帰ってからわくわくしつつA面に針を落とし、1曲目を聴いた瞬間に一発で参った。兎にも角にも、なんと美しい曲だろう !! 研ぎ澄まされたメロディとダイナミズムを感じさせるリズミックなアレンジ、そしてアニー・ハズラムの情感溢れる歌声・・・この瞬間の感動は、今でも容易に思い出せる。

かくして私の大好きな『燃ゆる灰』だ。ルネッサンスの音楽はクラシックとフォーク、そしてロックの要素を絶妙にブレンドさせたものだと思うが、本作で聴けるサウンドは後に比べるとまだオーケストラの比重が軽めであり、結果的にフォーク/ロック色の濃い作品に仕上がっている。とりあえずは前述のオープニング・ナンバー「Can you understand」を聴いてみて欲しい。低い音でドラが響いた後、遠くから美しいアコースティック・ピアノが聞こえてくる。素晴らしく印象的な美しいメロディだ。続いてリズム隊が入り一気にブレイク、僕などはこのイントロだけでもう心がイギリスに飛んでしまうのだが皆さんは何を感じるだろうか。続いて重厚なコーラスがフェードイン、アコースティック・ギターの伴奏でグループの看板だったアニー・ハズラムの声が響く。まだ若々しく、素朴だがとても説得力のある声だ。ストリングスを主体にした間奏を挟み再びテーマが繰り返されて曲は終わるが、まさにルネッサンスの魅力を代表する名曲だと思う。聴き始めて10年経つが未だに飽きない。

続く「Let it grow」も大好きな曲だ。演奏といい歌詞といい、シンプルだが心温まるものに満ちた本当にいい曲だと思う。同様の優しさは他のどの曲にも感じ取ることができるが、個人的な見解を述べると彼らの音楽にある「安らぎ」はサウンドの美しさ以上にメロディの良さがもたらしていたと思う。プログレッシヴ・ロックとは言っても彼らの基本は「良いメロディ、良い歌、良い演奏」だったろうし、思わず口ずさんでしまう素敵なメロディは彼ら最大の魅力だったのではないだろうか。

3曲目「On the frontier」と4曲目「Carpet of the sun」は、個人的には兄弟のような曲だと思っている。どちらも清々しく、心を和ませるとてもいい曲だ。特に後者はルネッサンス・ファンに非常に人気の高い曲である。5曲目の「At the harbour」も素晴らしく胸に染みる一曲だ。アニーの哀愁漂うヴォーカルはとても情感豊かで、港に残された女達の悲しみをうまく表現している。なお1991年に出た本作の日本盤CDではイントロで聴ける印象的なピアノがカットされていたのでご注意を。そしてラストのタイトル曲がまた決定的な名曲だ。上述のオープニング・ナンバーと対を成すような大作だが、イマジネーション豊かな演奏といい質の高いメロディといい、胸に染みるアニーの歌といい何の申し分も無い。ラストで聴ける印象的なギターソロ(名演!!)は当時大活躍していたウィッシュボーン・アッシュのアンディ・パウエルによるものだ。1990年のアニー・ハズラム来日公演でこの曲を聴いた時の感動も未だ忘れることが出来ない。

本作が発表された1973年と言えば、時期的にプログレッシヴ・ロックが頂点を極めていたと言える時代だ。各大物バンドはどれも矢継ぎ早に傑作を発表し、世界中でプログレが注目を集めていた筈である。ルネッサンスのロマンティシズムに溢れた音楽が当時のシーンでどのくらい注目されていたのか僕は知らないが、彼らの諸作品は発表から25年経っても古びない美しさとやすらぎに満ちているのだ。(00,09,17)

*このレビューは執筆者のホームページに掲載された文章を加筆・訂正したものです。


No.2

名前

ごうき

電子メール

g1201@aol.com

URL

http://members.aol.com/g1201/rock.html

いつ聴いたか

1978〜79年頃

 

その時の境遇

今で言うフリーター

今でも聞きますか

時々聴きます

レヴュー本文

私が中学〜高校の頃ですから1975年前後だったと思いますが、NHK-FMのローカル放送で、ものすごいロック番組がありました。隔週土曜日の午後3時10分から6時までの2時間50分をロックで埋め尽くした「水戸ロックタイム」という番組でした。NHKのアナウンサーだった田中勝美(かつよし)氏が仕切っていたこの番組は、ほんとにNHK? ほんとにローカル番組?と思えるような内容・選曲で、時にはまだピーガブ時代の日本では無名に近かったジェネシスをずっとかけたこともありましたし、フランスのマルタンサーカスとか、イタリアのイ・プーなどを知ったのもこの番組でした。かと言って田中氏はプログレおたくかと思いきやそうでもなく、何度か電話でお話しさせていただきましたが、マリア・マルダーが好きなどとも言っていました。 前置きが長くなりましたが、ルネッサンスを知ったのもこの番組です。曲は4枚目のアルバム『シェエラザード夜話』に収録されている、ルネッサンスファンなら誰でも知っている名曲「オーシャン・ジプシー」でした。アニー・ハズラムの水晶のような声、いちど聴いたら忘れられない美しいメロディーは、この1曲だけで私をとりこにするには十分でした。ビートルズで洋楽にのめりこみ、スリー・ドッグ・ナイトなどのポップス系を好んでいた私の「女性ヴォーカル狂い」のスタートがアニー・ハズラムでした。

 さっそく『シェエラザード夜話』を買い、次にその前の3枚目『運命のカード』を買いました。学生の身分ゆえなかなかその前の2枚に手が出ない(それと栃木の田舎ではルネッサンスを置いてあるようなレコード店がなかったのも事実)うちに、カーネギー・ホールでの素晴らしいライヴアルバムが発表され、ここで『プロローグ』や『燃ゆる灰』の代表曲を初めて耳にし、特に「カーペット・オブ・ザ・サン」には魅了されました。 ですから数年後にようやく『燃ゆる灰』を聴いた時も、代表曲はライヴで聴いていたので、何となく違和感を感じたのが正直なところでした。今ではもちろんスタジオヴァージョンの良さも感じていますし、粒ぞろいの楽曲、前後のアルバムがどことなく荒涼とした雰囲気を醸し出しているのに比べて、この『燃ゆる灰』には、ほのぼのとした暖かさも感じられ、間違いなくルネッサンスを代表する名盤だと思います。個人的には『運命のカード』や『四季』が好きなんですが、初めてルネッサンスを聴こうという方には、やはりこの『燃ゆる灰』がベストだと思います。

 収録曲は、はっきり言ってどれも名曲です。後期ほどクラシック寄りではなく、フォーク色が強いのも、このアルバムが暖かく感じられる要因のひとつでしょう。カーネギー・ホールでのライヴに収録された3曲については説明不要ですが、特にタイトル曲でのアンディ・パウエル(ウィッシュボーン・アッシュ)のギターは素晴らしいです。ルネッサンスでの楽器のソロというと、ジョン・タウトのピアノが連想されるくらいで、ギターはマイケル・ダンフォードのバッキングに徹するアコギがほとんどなので、ここでのゲストのアンディのプレイは、ルネッサンスの全レパートリーの中でも特筆すべきものですね。目立たないものの、ジョン・キャンプのヴォーカルも各アルバムでいい味を出しています。このアルバムで言えば「オン・ザ・フロンティア」ですね。

 そして何と言ってもアニーのヴォーカル。これはもう素晴らしいとしか言いようがありません。高くてきれいな声のヴォーカリストはいくらでもいるでしょうが、ルネッサンスにはアニーしかあいません!91年にアニーの待望の日本公演が実現しました。どんなコンサートでもそうでしょうが、あれほど集まった人たちがルネッサンスの音楽を愛しているんだと感じられたコンサートはありません。それと昨年出されたブラジルでのアニーのアコースティックライヴ盤。ライヴでは初お目見えの『燃ゆる灰』収録の「レット・イット・グロウ」(クラプトンの同名の曲も泣けますね)のイントロでの大歓声・・・みんな、ルネッサンスを、アニーを好きなんですね。

 このところBBCでの音源が立て続けに出されています。オーケストラがなくても十分に満足できる演奏だと思います。これを機会にもっともっとルネッサンスを聴く人が増えれば、25年来のルネッサンスファンとして、こんなにうれしいことはありません。

 最後に『燃ゆる灰』に関するどうでもいいことを。熱心なファンなら知っていることですが、ジャケットが2種類あります。アニーが笑っているものとそうでないものです。私のHPのルネッサンスのページに載せてありますので、興味のある方はどうぞ。それと、アナログ盤のインナーには、実際には歌われていない「カーペット・オブ・ザ・サン」の2番の歌詞が印刷されています。(00.Sept)





No.3

名前

Mr.Lizzy

電子メール

asuba-3.27@gamma.ocn.ne.jp

URL

いつ聴いたか

1988年頃? 

その時の境遇

いろいろな音楽を聴いていました。

今でも聞きますか

聴きます。

レヴュー本文

アニーハズラム在籍時のルネッサンス、とくに『四季』あたりまでの作品はどれも名盤と呼ぶにふさわしく、どのアルバムも「このアルバムがルネッサンスで一番好き」という人がいます。私の場合もどのアルバムも好きなのですが『シェエラザード夜話』とこの『燃ゆる灰』はとても好きで何度聴いても飽きることがありません。

ルネッサンスの楽曲の特徴はいうまでもなく美しいメロディーと美しいボーカル、そしてクラシックとフォークをロックに融合させたプログレッシブなアレンジだと思いますが、なかでも親しみやすく美しいメロディーはこのバンドの最大の武器であり、魅力だと思います。彼等にとって2枚目(アニー期では)のアルバムとなる本作ですが、すでに自分たちのスタイルを確立しており、その魅力を十二分に発揮させた傑作です。後のアルバムのように分厚いオーケストラはありませんが、その分アコースティックで素朴な味わいがあり、美しいメロディーを引き立てています。

しかし単にシンプルなだけではなく、よく聞くととてもよく練られ、計算されたアレンジでこのバンドが並のバンドではないことがわかります。自分たちの魅力を理解していてそれを伸ばす。簡単なようでいてこれが出来ている人は多くありません。しかしルネッサンスは自分というものをよくわかっていてけっしてコマーシャリズムに流されることなく傑作と呼ばれる数々の作品を残してきました。『燃ゆる灰』はそんな彼らの初期の代表作であり、今も愛され続けている傑作なのです。(02.July)


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