American Rock

『ペット・サウンズ』ザ・ビーチ・ボーイズ

クロスレヴューvol.1



No.1
名前 アブラヤ
電子メール aburaya@cool.email.ne.jp
URL http://www.asahi-net.or.jp/~dv5y-ucd/
いつ聴いたか 1987年
その時の境遇 花の独身時代でした(笑)
今でも聞きますか どちらかといえば次作の『フレンズ』をよく聴きます。
レヴュー本文  ビーチ・ボーイズと言えば、どうしても夏と海というイメージがついてまわる。 燦々と照りつける太陽の下で、彼女と砂浜で戯れている時などに、傍らのラジオなり海水浴場のラウドスピーカー等から、彼等の「サーフィンUSA」「ファン・ファン・ファン」「グッド・バイブレーション」などのヒット曲が聴こえてくれば思わず「イカすぜ!この恋!」と呟いたりしたのは…はたして私だけではない筈だ。
そうでしょ?皆様!!やはり彼等のサウンドは本国メリケンだけでなくて、極東の島国に於いても普遍的な夏物語りを演出してくれたのだ。(笑)

 私がレコード屋さんで、この『ペット・サウンズ』を買い求めた日のことは、今でも忘れはしない。あのブルース・ウィルス主演の「ダイ・ハード」を某ロードショー館で観た直後だったと記憶しているので、おそらく1987年の春先だったと思う。それにしても「ダイ・ハード」は面白かったぁ。如何にもメリケン映画、メリハリの利いたストーリー展開が息もつかせぬ程にスリリングで、最初から最後まで無茶苦茶面白かった。なにしろ劇場の照明が点灯するまで、観客達の惜しみない盛大な拍手が、止まなかった程だった。

 …ってな訳で、大量のアドレナリンをドバァ〜〜ッと放出しまくった後に、立ち寄ったレコード 屋さんで買ったのが、今回取り上げる『ペット・サウンズ』だったのでありました。何故『ペット・サウンズ』買ったのぉ?と聞かれても困ってしまうのですが(笑)それまでにもラジオ等で、彼等のヒット曲には親しんでいたものの、実は…恥ずかしながら、彼等のレコードはベスト盤以外は一枚も持っておりませんでした。つまり…折から再評価の気運が、極々一部の メディアで盛り上がっていて(笑)「よし!それなら一度話のネタにでも、買って聴いてみよ〜っと!」というのが真相なのです。所謂”付和雷同的親父”なんですねぇ私って…。(^^;)

 さて、家に帰ってからステレオ装置の前に陣取って、さっそく噂のアルバムを聴きました。 「ん?なんだか妙な音だなぁ…。それに明るくない!いや、暗くて陰湿だぞなもし!」(笑)と 目が点になったっていうのが、その時の嘘偽りのない正直な感想でした。 しかし、そのまま『ペット・サウンズ』をCD棚で"肥やし状態"にするのも癪なので、それから暫くは連日耳にタコが出来る程聴きまくりました。
そして好きになりました…っていうよりも気持良い部分が、じわりじわりと滲み出てきたのです。つまり…スルメみたいなアルバム。(笑)おそらく自分から求めない限り、決して彼方からは歩み寄ってくれない孤高の名盤…。

 おそらく現在、この『ペット・サウンズ』は、名盤中の名盤として揺るぎない評価を獲得して 久しいかと思います。現在店頭では色々なヴァージョンの『ペット・サウンズ』が並んでいる ようですし、レコーディングにまつわる数々のエピソード、例えば当時のブライアン・ウィルソンの精神状態云々…の詳細なデータを、それこそ総力特集する音楽誌なども、たまに書店で見かけたりするのですが、是非とも「まっさら」な状態で聴いてみて下さいませ。m(__)m

 この『ペット・サウンズ』が後世に残る理由は、決して「独創的なヴォイシング」でも「摩訶不思議なコード進行」でも、ましてや全然洒落っけのないアルバム・ジャケットでなく(笑)、ブライアン・ウィルソンから我々に投げかけられた切実なるメッセージなのではないかと思います。耳を澄ませて御覧「君達と繋がっていたいんだよ!」っていう、彼の叫び声が聞こえるでしょ?

(Feb.11,2000)

 



No.2
名前 ろびー
電子メール isg0@peach.ocn.ne.jp
URL  
いつ聴いたか 1997年
その時の境遇 大学受験を目指しつつも、夕方からテレビを見ている ような、不良受験生
今でも聞きますか たまに。
レヴュー本文  このアルバムをはじめて聴いた時の印象は、あまり芳しいものではなかった。
一つ一つの楽器の音がはっきりと聴き取れなかったし、まずその音像に面食らったのを覚えている。つまり、僕の望むようなポップスではなかったのだ。当時僕にとっての「ポップ」ということは、甘酸っぱく、一つ一つのフレーズに感情を込めることのできる音楽こそが「ポップス」であったのである。

 しかし、人間、無理をするということも大切である。何回か、聴きすすめていくうちに、僕はこのアルバムの持つエヴァーグリーンな要素に気付いていくことになる。つまり、「ペット・サウンズ」とはブライアン・ウィルソンの日記だったのである。

 僕らは、ある感情を時にとどめておく手段として、「活字」というメディアを持っている。それと同じように、ブライアンは、数多くの楽器を、自らの感情を残す手段として重ねていったのである。それこそが、冒頭に述べた「一つ一つの楽器の音がはっきりと聴き取れなかった」ということである。したがって、僕が「ペット・サウンズ」の音像に面食らったということは、僕がブライアンの感情と格闘していたことに他ならない。

 しかし、今となっては、それが「ポップ」の本質であるということが分かる。何故なら「ポップ」とはその時々の「今」を封じ込めた、パックである。ブライアンの「今」と、僕が当時「ペット・サウンズ」を聴いた「今」とは、当然のことながら異なる「今」である。そこで軋轢が生じるのは、至極当然のことなのである。つまり僕にとっての「ペット・サウンズ」とは、ポップミュージックの本質を考えるきっかけを与えてくれた 作品だといえる。

(Feb.12,2000)



No.3
名前 エーハブ船長
電子メール yutayuta@iris.dti.ne.jp
URL http://www.iris.dti.ne.jp/~yutayuta/index.htm
いつ聴いたか 1994
その時の境遇 大学生
今でも聞きますか 聴きます
レヴュー本文 このアルバムのレビューを書くにあたって、久しぶりに頭から聞きなおしてみた。何しろポップ・ミュージック屈指の名作である。どういう点を挙げていこうか迷ったので、とりあえずはきちんと聴きなおす事にしたのだ。

 でもやっぱり現実は甘くない。オープニングの「素敵じゃないか」からラストの「キャロライン・ノー」に至る数十分、いつものように聴きほれてしまっただけで何と言って良いかは全く浮かばなかったのである。強引な言い方をすれば、ある晩見た最高に面白い夢があるのだが、その面白さはどうしても他人に上手く伝えられない、そんな感じだ。でも悩む必要は全くなかろう。というのは本作の素晴らしさは音楽の好きな人なら誰にでも理解できると思えるからだ。四の五の言わずにとりあえず聴く、恐らくそれだけで十分なはずである。ブライアン・ウィルソンという音楽家がその才能を駆使して作り上げた天下の名盤、そんな作品なのだ。

 それでも少しは個人的な感想をコメントさせていただこう。まず本作は編曲が凄い。どの曲にも独特の分厚い音があるが、僕が最初に驚いたのは「駄目な僕」と「ヒア・トゥデイ」での意図的にしてはあまりにも摩訶不思議なベースラインだった。ここで聴けるベースの音色はきつめにミュートをかましてピックで弾けばそれなりに真似出来るのだが、いざ弾いてみると何でまたわざわざこの旋律を弾かせるの、と思わず首をかしげてしまうものがある。しかもそれが違和感なく曲に合ってしまっている。計算づくだったのか偶然の産物だったのか解らないが、ロック・ポップスの歴史上ベースの概念を変えた演奏の一つとして数えるべき演奏である。
また「少しの間」、「神のみぞ知る」、「キャロライン・ノー」といった曲の有無を言わせぬ美しさが凄い。曲ごとの演奏は短くとも耳を傾けるだけで無限の想像力を感じさせるし、同時に言いよ うのない安らぎも感じさせる音楽だと思う。この気持ちよさが思わず癖になってしまった人は多いだろう。

 あっさりと書いてしまったが、僕の稚拙な文章で本作の素晴らしさを語るのはやっぱり無理なようだ。とりあえずは聴いてみるのが一番だろうし、日本全国どこに行っても入手できるだろうから、未聴の方は是非、是非。

(Feb.13,2000)



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