American Rock

『いとしのレイラ』デレク&ザ・ドミノス

クロスレヴューvol.3


No.11
名前 ARTI
電子メール fwgc8996@mb.infoweb.ne.jp
URL http://village.infoweb.ne.jp/~fwgc8996/index.html
いつ聴いたか 発売と同時だもんね。
その時の境遇 高校生だす。鰤モノ(ブリティッシュ)に夢中で、ほんとは聴いてガッカリしただす。
今でも聞きますか 聴くもんね。最近、裏が判ってからは特に美しさが増しただす。裏といっても恋愛沙汰じゃないからな。
レヴュー本文

 こういう言い方が妥当かどうか判らないが、天才クラプトンは70年代に入ってからもタダの人にはならなかった。ご存じのように、それどころか我々に以前にも増して豊潤で感銘的なサウンドをもたらしてくれた。ブルースをベースに活躍してきたミュージシャンの一つの到達点を示唆し、尚かつ大変なヒットを飛ばしたアルバムがレイラだ。売れなくとも名盤と言われ重箱の隅でいじけているようなアルバムが束になってもかなわない内容と才能がほとばしる希なるヒットアルバムとなった。そこには色褪せることのない新鮮で飛躍的な創造が存在する。

 イギリスのブルースロックはその発展過程でブリティッシュ然としたハードロックやヒット狙いのポップグループ、後追いプログレと進化を遂げてきた。いろいろな雑誌の評論や特集などで言い尽くされているだろうが、アメリカ市場を狙い撃ちにしたと思っていたレイラは、実はアメリカに入り込み体感したクラプトンのルーツミュージックで、見事に演奏された音は南部系あるいはスワンプと表現されている。そのサウンドとはデラニーアンドボニーで巡り会い、このドミノスで花開いたアメリカンミュージックの源泉に通じる流れだったようだ。ゴスペル、ブルース、カントリー、R&B等が混然と絡み合い作り出される源流がクラプトンの新しい道となった。

 この70年前後の時期と言えば、私は高校生だった。キャプリコーンからデビューしたオールマン・ブラザースを銀座ヤマハで買い求め、そしてそれはまだサザンロックと言われ聴かれていた。知らないことが多すぎて理解するのに時間がかかった頃だ。LAにはリオン?ラッセル(オクラホマ隊)の他にも前述クラプトンに影響を与えたディラニーアンドボニーや多くの南部系ミュージシャンがいて、バーズ一派、CSN&Y、デッド等はカントリーの衣で飾り、サンフランシスコレーベルにはブルースやカントリー、R&Bグループが混在していた。もちろんCCRは南部らしいサウンドを出し続け、アメリカンミュージックと形容されたザ・バンドにいたってはご存じの通り王道を歩みはじめた。
 今となって考えると、我々がゴスペルやブルース、カントリー、R&B、R&R、あるいはそれらのゴッタ煮、聴きようによってはジャズ的と取らえられた物まで、このルーツロックという大きな受け皿に盛られた種々の果実のようであり、あるいは底流に流れる大河の支流にしか見えなくなってくる。またその頃は元々黒人音楽とりわけブルースに憧れていたイギリスのミュージシャン達が先祖帰りを一斉にはじめた時期にもあたるらしい。ローリングストーンズでさえ例外ではない。後のジェフベックにいたってはスティーブ・クロッパーのプロデュースでメンフィスに乗り込みファンクなサウンドを生み出している。
 その整ったロケイション中でこのレイラは産み落とされたのだ。だからデュアンのギターや他のメンバーの参加は、この大きなルーツロックの流れの中で必然だったと理解するがどうだろう。米国南部の強い芳香を放ち緊張感に支配されていながら、そのくせゆったりとしたブルーステイストに溢れたサウンドはスワンプ然として美しい。だからか今でも聴き続けている1面の曲などは肩の力が抜けたとかリラックスしたとか言われてきたが、そうしなければ演奏できない緩さが要求されたアメリカのロックなのだと思う。ゆったりとしたうねりがじわりと押し寄せ、一瞬緊張を伴って高揚した後に弛緩してゆく快感はイギリス物では決して味わうことの出来ない本物だった。日本のファンにしてみれば、ゴットと呼ばれた男が名もないデラニーアンドボニーなどというグループに唆され寝食を共にしてどうしたんだろ、と不可解に思っていた頃だ。

 当時イギリスの音とアメリカの音には明らかに違うニュアンスが存在している。リズムのノリ、サウンドの乾燥度、フレーズや決めの生真面目度は別物だと思った方がいい。クラプトンがこのアルバム以前に演奏していたブルースではオールマンやブルームフィールド、ジェシ・デイヴィス等が入り込む余地はないだろう。ノーバディ・ノウズやキー・トゥ・ザ・ハイウエイ等にはそれほど同じブルースを演っていてもまるで違う何かが存在する。イギリスのミュージシャンはこのアルバムを聴いてショックを受けたに違いない。デイブ・メイソンやジョー・コッカーなどよりずっと敬意を祓われてきたゴッドと呼ばれた男では尚更だと思う。オールマンのブルースやホィットロックのスワンプを取り入れたクラプトンが、ドロ臭さく生き生きとして目眩がするほどの男を演じているのだから。(ARTI 12/5)



No.12
名前 obi-one
電子メール obi-one@fc4.so-net.ne.jp
URL  
いつ聴いたか 高校1年の時
その時の境遇 森田という友だちから借りて
今でも聞きますか 今でも思い出したように
レヴュー本文

 物心ついて音楽を聞き始めた頃もうクリームは解散していた。

 だからクリーム最高っていう思い入れはなくって、このドミノスや当時新譜として出た『461』と平行してクリームを聞いていた。みんなが騒ぐほどCrossroads 最高!とか正直あまり思わなかった。
 音楽は陰鬱で、ワウワウの使用やウーマントーンで繰り出されるクラプトンのフレーズは、子供心にも頭でっかちな印象を受けた。まだ本物のブルースなんて全然聞いていなかったけど、漠然としたイメージとして僕がブルースに抱いていた『泣き笑い』の世界が彼の早弾きからは伝わって来なかったという記憶がある。

 でお前はじゃあ何を聞いていたんだ?と言われると、僕は当時ロギンス&メッシーナに夢中だったんです。ジム・メッシーナの乾いたパキパキ・テレキャスターに見知らぬアメリカの景色を感じながら新聞を配達したり、女の子を好きになったり。

 そんな高校時代に『レイラ』を初めて聞いた。最初は地味な印象の一言。でも次第にこれがクリームとは違うブルース表現なんだな、と感じてきた。最初に好きになった曲はBellbottom-Blues。天才と持て囃されたギタリストから初めて歌が聞こえてきた気がした。『俺は消え去りたくない、君の心のなかで生きていたい』という赤裸々な歌が聞こえてきたのだ。間奏のさりげないミュート・ピッキングも枯れていて。後で知るのだが、あれはロビー・ロバートソンに影響された一滴だったんですね。

 今聞き直して思うのはリズム・セクションの懐の深さ。3人が格闘技していたようなクリームとはリズムに対するアプローチが全然違う。で面白いのはカールのベースが朴訥とした雰囲気を醸し出しているのが碓かに伝わってくるのと同時に、ジム・ゴードンのドラムスが結構派手な点が対照的なこと。彼の手数が多いドラミングはWhy Does Love、Little Wing、Layla といったドラマチックな曲ですごく映えていることは特筆しておきたい。これがケルトナーだったら逆に輝かなかった演奏だな。ボビー・ウィットロックの男気溢れるボーカルとゴスペル・ライクなオルガンの隠し味は、『イン・コンサート』を聞いていてもしみじみと実感出来る。彼こそバンドの南部色に貢献したキー・パーソンだったと、贔屓目にも思う。

 でもずばり主役は他ならぬデュアン。クラプトンが頭で必死になって練っているラインを、デュアンは自然に体から発散させている。Have You Loved、key To The Highway なんて完全にクラプトンを超えているもんなー。それでも彼に刺激されてブルースするクラプトンは、充分魅力的だし、彼の切なさが直に刻まれていることを忘れてはいけない。

 英米のトップ・ギタリスト同士がブルースという神に導かれて運命的な出会いを果たし、南部という土地の魔力に思いの限りを託した奇跡的な記録。今ならそう素直に言える。
 Laylaは後半にテンポを落とす。そこに僕は南部のでっかい太陽に溶けていくクラプトンの歌を聞いた。 (22.Mar.1999)



No.13
名前 nauboo
電子メール nauboo@ab.mbn.or.jp
URL http://plaza28.mbn.or.jp/~nauboo/
いつ聴いたか 1996
その時の境遇 社会人1年目
今でも聞きますか 時々、聴きます。
レヴュー本文

 嫌いではないのだけれど、今一つ聴く気にならないアーティストって誰にでもあるでしょう。
私はそういう時、「なじめない」て言い方をするのですが、クラプトンはその第一。確かにすごいのは解ります。'Cross Road'なんか聴くと鬼気迫るものがあります。

 でも基本的に白人のブルースなら Creamや彼より Paul Butterfield の方が良いと思う私なのです。そんな私でも何の躊躇も無く好きって言える盤がある。それがこれ。ファーストソロも好きですが、やっぱりこれにはかなわない。

 でもその動機は少し不純かも知れない。その「好きだ」って言う理由の何分の1かは Bobby Whitolck にある。
キーボーディストとしてだけではなくSam & Daveをお手本にしたというダブルボーカルの1人として、ソウルフルに歌う彼が、クラプトンもボーカリストとして力量を引き出しています。
でもクラプトンが好きで、Sam & Dave を良く聴くってひとはどのくらいいるんでしょう。
それって彼が何故「ブルースブラザーズ2000」に出演したの、って言うのが解るか解らないかの違いなんです。もちろん Duan Allman のギターにも特筆すべきものはあります。
でも、そればっかり考えていると「ブルースギターの王道」って具合に、また深みに嵌まっていってしまいます。ABB 聴くなら Gregg のボーカルも聴きましょう。

 結局は 'Layla'に以上にクラプトンで好きになれるものがない。クラプトンは「なじめない」けど、Dominosは好きってことなんでしょうか。



No.14
名前 loeide72
電子メール int1967@osagashitai.com
URL http://osagashitai.com/
いつ聴いたか 1973年
その時の境遇 中学生のころ?記憶が定かではない。
今でも聞きますか たまに聴きます。オールマンのフィルモアのほうが、よく聴きます。
レヴュー本文

 クラプトンの中では、一番最初に聴いた記憶がある。ヤードバーズもクリームもデレイク&ドミノスも追体験ですから、同時期かな?
 で、デュアン・オールマン、デイブ メイソン、関係ないけどニルス ロフグレンあたりが、私の中では同系列のギタリストです。



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