American Rock

『キャプテン・アンド・ミー』ドゥービー・ブラザース

クロスレヴューvol.1



No.1
名前 YUKIO
電子メール yukiosaito@virgo.bekkoame.ne.jp
URL http://www.bekkoame.ne.jp/~yukiosaito/
いつ聴いたか 1974年?
その時の境遇 中学3年?
今でも聞きますか 時々聞ききたくなりますね。
レヴュー本文 最初に聞いたアメリカン・ロックはドゥービーズではありませんが、アメリカン・ロックの良さを最初に教えてくれたのは、このドゥービー・ブラザーズだったのかもしれません。私がロックを聞き出した70年代初頭、ブリティッシュ・ロックの巨匠たちはまさに全盛期を迎えており、アメリカン・ロックはまだまだマイナーな存在であったと思います。すでに熟成した感のあったブリテッシュ・ロック・シーンに比べて、アメリカン・ロック・シーンに感じたことは、60年代末の激動、サイケデリックなフラワー・ムーヴメントをくぐり抜けて、これから新しいアメリカの音をつくり出そうとしている勢いです。そして、ザ・バンド、オールマン・ブラザース、イーグルス、リトル・フィートなど70年代のアメリカを代表するバンドのひとつとして、その名をロック・シーンに刻み込んだのがこのアルバムではないかと思います。

モビー・グレープをアイドルとして、サンフランシスコのストリート・バンドから生まれたという彼等ですが、サイケなところは微塵もなくフォーク、ブルースなどの伝統的なアメリカ音楽を下地に独自のサウンドを築きあげるところは、まさにバーバンク的なアプローチとも言え、黒人音楽の影響も感じさせる独特のリズム・セクション、テクニカルなアコースティック・ギターのアンサンブル、ハードにドライヴしながらもどこかカラッと乾いたエレクトリック・ギターのリフ、粘りのある骨太なリード・ギター、メロディアスなサイド・ギターのカッティング、男臭いコーラス、そしてときおり聞こえるペダル・スティールの優しい音色、哀愁感漂うハーモニカなどなど特徴的な音に虜になってしまうのに時間はかかりませんでした。

このアルバムのハイライトはやはり「チャイナ・グローヴ」と「ロング・トレイン・ランニン」でしょうか。まぁ定番ですけど。そのリズム・ギターに憧れて良く一人で弾いていたものでした。ついぞ、それらをバンドでやる機会には、恵まれなかったのですけど...。大学で軽音楽部に入って、ドゥービーズのコピー・バンドを見てあまりのうまさにショックを受けたこともあったな〜。やらなくて良かった...(笑)。このバンド、タイトにきめるのは結構難しいですからね。この他、哀愁のある「サウス・シティ・ミッドナイト・レイディ」もいい曲です。カントリー調ではありますが、カントリーをストレートに連想させないところが、数ある西海岸のバンドの中でもドゥービーズが偉大だったところで、やはりそのリズム・セクションがいかに独創的だったかということでなのでしょうね。南部の影響も見受けられはしますが、これも何かフィルターを通したように直接的ではなく、このあたりにバーバンクのマジックを感じてしまうのですが...。

このアルバムの前の2ndアルバムの『トゥールーズ・ストリート』からこの『キャプテン&ミー』、『ドゥービー天国』、『スタンピード』までの4作は、ドゥービーズの黄金時代といえ、どのアルバムもよく出来ています。土の香りのする豪快かつ爽快な音を求めるならこのあたりを聞くべきでしょう。個人的には「ブラック・ウォーター」を収録している『ドゥービー天国』が結構好きだったりします。アコースティックな1stアルバムも悪くありませんが、やはりこのあたりのドゥービーズを聞かずして70年代のアメリカン・ロックは語れないでしょう。

『スタンピード』からは、これまでゲストだったスティーリー・ダンのジェフ・スカンク・バクスターが正式参加して、一時的にトリプル・リード、ツイン・ドラムスという強力な布陣になるのですが、間もなく中心メンバーのトム・ジョンストンが体調を崩し、スティーリー・ダンからマイケル・マクドナルドを迎え『ドゥービー・ストリート』でドラスティックな変化を遂げることになります。突然垢抜けて、5thアヴェニュー・バンドみたいなソウルフルなイーストコースト風のバンドになって行くのですけど、これはこれで気持ちの良いアルバムでありましたが、別のバンドになってしまった感じもしましたね。

Dec.25, 1998
I'ts a Christmas Day

No.2
名前 Kensaku
電子メール s-khg@rc4.so-net.nejp
URL  
いつ聴いたか 1976年ぐらい
その時の境遇 大学生で、バンドもやってました
今でも聞きますか 家ではあまり聴きませんが、クルマではよく聴きます
レヴュー本文 これは『トゥールーズ・ストリート』の次に好きなアルバムです。これを聴くようになった頃って、YUKIOさんが書かれてるようにブリティッシュ・ロックのほうが、ヒットも多かったように思います。そういった洗練されたロックに比べればこちらはとてもオシャレなものではなく、彼らの曲をレパートリーにしていた私のバンドでも、当時女子大の学園祭で演奏したら見事にシラケました。でも、これは間違いなく彼らの代表作です。初期の、という断り書きが必要ですが。

音のほうは豪快でありながら、信じられないぐらいコーラス・ワークがきれいなのは、やはり彼らはウェスト・コーストのバンドだからでしょうか。見た目は汚い感じが漂うんですけどね。そのあたりがイギリスのロック好きには、敬遠されてたかもしれないです。でもこれぐらいメンバー・チェンジの激しいバンドって他にはイエスぐらいでしょう。で、決定的だったのはリード・ヴォーカルと曲つくりをしていたトム・ジョンストンとマイケル・マクドナルドの実質的な交代でサウンドの方もすっかり変わりました。でも変わってからも、好きなんですけど。別のバンドって思えば腹も立たない、とずーと自分では納得してましたし。でも、良く考えるとトムの時代があってこそ後の成功もあるんですよね。今のところの最新盤ライブでもこのアルバムから意外な選曲をしてくれてとてもうれしいです。一生聴きます。
(Dec.1998)



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